東京通過思想の利点&ここが疑問!
2004.10.14更新
1.東京通過思想の利点とは?
ここでは特に中距離電車の東京〜上野間を直結した場合の利点について解説します。
◆乗換えが減る
バリアフリーが叫ばれる世の中、列車同士の乗換えはなるべく少ないほうが、
たとえあっても極力楽なほうがよいものです。
◆スピードアップ
乗換え時間が減れば、それだけで所要時間の短縮につながります。
◆ターミナル駅の混雑緩和
現状では東京や上野で全ていったん降ろされるため、この2駅に混雑が集中します。
直通すれば乗換え客が分散するため、乗りとおす人はもとより、
東京や上野駅自体で乗降する人も混雑緩和の恩恵を受けることが出来ます。
◆ターミナル駅のスリム化
全ての列車が折り返しになると、ターミナル駅には
たくさんの線路・ホームが必要になります。
特に中距離列車の場合、折り返し時に車内清掃を行うので
停車時間が延び、必要な線路・ホームは更に多くなります。
ホームが多いと、次の電車がどこから出るか確認するのが大変ですし、
駅自体も大きくなって乗り換えに長い距離を歩かされることになります。
しかし、直通列車を主体にして折り返しを少なくすれば、
線路・ホームの数を整理でき、乗客にとって分かりやすくなるだけでなく、
鉄道会社自身にとっても、地価の高い都心に大規模な設備を抱えなくて
済むようになるという、経営上の利点があるのです。
東京駅は既にかなりスリム化されているので
これ以上のホーム削減は無理(だし、その必要もない)ですが、
高架ホームと地平ホームに分かれている上野駅などは、
かなりのスリム化が期待できそうです。
◆東京〜上野の混雑緩和
現在この区間には京浜東北・山手の2線しかありません。
しかし、宇都宮・高崎・常磐線を上野まで利用してきた乗客が
全て上野で降りてしまうわけではなく、むしろ大多数が
京浜東北・山手線に乗り換えて東京方面へ向かいます。
このため、上野〜東京間は特に混雑します。
「東京通過思想」には、この区間にもう1本複線を引くことで、
混雑を緩和しようという狙いも込められています。
◆ダイヤのパターン化(JR東日本特有の事情) new!
「なんじゃそりゃ?」と思われるかもしれません。
現在、特に東京行や上野行の上り列車・夕方以降の列車を利用しようと思うと、
本数の割に妙に待たされる時間帯があることにお気づきでしょうか?
これはJR東日本の中距離列車に特有の事情なんですが、
日中の下り列車の始発駅の運転間隔をそろえることには熱心であるものの、
ターミナルから遠くなるに連れて、あるいは上り列車の場合、
宇都宮・高崎線に至っては下りの夕方以降についても、
運転間隔に規則性がなくなってしまうのです。
ところが、都心を縦貫する湘南新宿ラインの場合、
日中は都心方向へ向かう列車の運転間隔にも規則性があるのです。
これは、上り列車だからといって運転間隔を適当にすると、
直通先の下り列車の運転間隔も乱してしまうため、
結果的に上下とも気を使わざるを得ないためだと思われます。
したがって、東京〜上野間の東北縦貫線開通のあかつきには、
現在は運転間隔がでたらめな上野方面・東京方面の上り列車も
規則的な運転間隔に改善される可能性があるのです。
もちろん、今すぐ改善してくれるに越したことはないのですが…
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2.東京通過思想のここが疑問!
◆Q&A目次
Q1:具体的な計画はあるんですか?
Q2:技術的に難しいのではないですか?
Q3:新宿ルートが出来たのに、東京経由も必要なのですか?
Q4:東京を貫通する路線は他にもあるのでは?
Q5:他の大都市はどうなっているのですか?
Q6:ダイヤが乱れたとき、影響が広範囲に及ぶのでは?
Q7:東京や上野始発の列車がなくなったら座れないので困ります!
新宿経由のルートは、既に「湘南新宿ライン」として2001年12月1日に運転開始しました。
さらに、2004年の池袋駅立体化完成後、運転時間帯が拡大されることになっています。
上野〜東京間の建設についても、技術的な検討を進めることが決定しました。
また、同区間については「運輸政策審議会」というところから出された答申
(将来の鉄道網のあるべき姿を提言したもの)にも
最優先で取り組むべきという形で盛り込まれています。
#ただし、答申には各社の事業計画を拘束するほどの権限はありません。
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Q2:技術的に難しいのではないですか?
※現在、東京〜秋葉原間には東北新幹線がぴったり寄り添って走っているので
とてももう1本線路を引く場所はないように見えます。
本当に実現できるんですか?
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実は、この区間では新幹線の真上に線路を引くことを想定しているようです。
その証拠に、神田付近の東北新幹線の線路脇には
上に高架橋を建てるための基礎と思われる構造物があります。
→画像はこちら
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Q3:新宿ルートが出来たのに、東京経由も必要なのですか?
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神奈川〜埼玉方面を結ぶという目的のみであれば、
別に新宿経由だけでも構いません。
ただ、このルートは常磐線方面が事実上利用できないことと、
もう一つの目的である上野〜東京間の混雑緩和には全く役立たないので、
やはり東京〜上野間の線路増設も必要だと思います。
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その通りです。
古くからあるものとしては京浜東北線や総武・中央線、
郊外の私鉄と相互直通をしている地下鉄もこれに該当します。
今回のテーマである南北方向なら、京浜東北線のほか
JRにこだわらなければ営団南北線&埼玉高速(工事中)なんかも
都心貫通型といえます。
しかし、これらの線区は停車駅が多く、比較的近場をターゲットにしており、
神奈川〜埼玉を結ぶ路線として考えた場合、時間がかかりすぎるのが難点です。
やはり、速達性に優れた中距離電車の直通が望まれます。
なお、東京湾岸を結ぶ中距離路線としては、
既に総武快速と横須賀線が直通運転を行っています。
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まず大阪駅では、JR京都・神戸線がスルーになっており、
新快速電車が滋賀県・長浜〜兵庫県・姫路などをロングランしています。
また、最近はJR宝塚線と学研都市線がJR東西線で結ばれ、
直通運転が始まりました。(JR東西線内は各駅停車ですが)
南へ伸びる阪和線・大和路線は、天王寺や湊町(現:JR難波)など
別のターミナルを持っています。
しかし、近年は両線とも大阪環状線経由で大阪まで乗り入れる列車が増え、
JR京都・神戸線系統とのりかえ1回で済むようになっています。
札幌・名古屋・福岡(博多)の場合も、いずれも
中心部の駅を串刺しにするJR線の快速列車が存在します。
こうして見ると、東京のように中距離電車のターミナルが
方面別に分かれているのは、むしろ特異な例と言えます。
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Q6:ダイヤが乱れたとき、影響が広範囲に及ぶのでは?
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はい。東京通過思想で一番の弱点でございます。(^^;
特にJR東日本は事故でダイヤが乱れたときの
回復が遅いことで定評がありますし…
※湘南新宿ラインも誕生後しばしばダイヤの乱れに巻き込まれてますし(ぼそ)
私が利用していた京急も都営線を介して京成とつながっており、
JR以上に複雑な運用を行っているのですが、
他線区のダイヤの乱れで致命的な混乱に陥った経験は
幸いにしてめったにありません。
ダイヤとしては比較的単純で、設備的には京急よりずっと恵まれているJRであれば、
指令が的確に機能さえすれば混乱はもっと小さく抑えられるはずなんですが…
これは通過思想の罪というより、運転整理の仕方の問題だと思います。
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Q7:東京や上野始発の列車がなくなったら座れないので困ります!
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うっ、確かに。(^^; 特に長距離通勤客にとっては死活問題ですね。
さて、都心の始発列車が特に必要な時間帯というのは、
夕方のラッシュ時ではないかと思います。
既にスルー運転を行っている他の線区でも、さすがにこの時間帯は
それなりに始発列車を設定している例がほとんどです。
(総武快速・横須賀線、名古屋・大阪地区も同様)
「東京通過思想」も、東京駅や上野駅の折り返し機能を
全くなくしてしまえ!ということではないので、
必要な時間帯にこれらの駅始発の列車を設定することは
技術的に十分可能です。
日中は、座席の確保が難しいほど詰め込むこと自体
既に間違っていると言うのが私の持論ですので、
混んでいるなら増発なり編成増強で対応するのが正攻法だと思います。
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